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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
御霊神社のことを、「ごりょうさん。」と云っていたのを覚えている。おそらく土地の人がそう呼び馴染んでいたのを、私達もそのまま云い倣っていたのだろう。私はしづやに被負って、よく御霊神社の境内へ遊びに行ったようである。「しいや、ごりょうさんへ行くの、しいや、ごりょうさんへ行くの。」そう云って私がしづやにせがんだということを、東京に帰ってきてから、よく母などから聞かされたものである。私は「しづや。」という発音ができず、いつも「しいや。しいや。」と呼んでいた。御霊神社の縁日で、夜店の飴屋のみせをしづやの背中にいて見て、あめが欲しいとせがんだら、「あれは毒です。」としづやから叱るように云われて、飴屋の親爺の顔がそのとき鬼のように見え、毒なものをなぜ売っているのだろうと子供心に訝しく思ったことを覚えている。文楽座で御廉の垂れているのを見た記憶が眼に残っている。おそらく開演前に土間からでも、しづやに被負っていて見た記憶であろう。やはり御霊神社の近くだったらしいが、あやめ館と云う寄席があって、そこへも私はよくしづやに連れられて行ったようである。寄席の入口の前にしづやといたとき、女芸人が人力車で乗りつけたのを見た。