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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
しづやが私の家から暇を取ったのは、幼稚園へ通っている間であったようである。幼稚園の終りの頃には、私は年寄の婆やに附添って行ってもらうようになったから。しづやが私の家にいた間のことで覚えていることが一つある。その頃私はひとりでは廓外へ出たことはなかったが、ある日ひとりで京町二丁目のはずれのおはぐろ溝の際にあった、ふだん私の家で浅草方面へ行く場合に使用させてもらっている小林と云う仕舞屋の土間を通りぬけて廓外へ出て、小松橋の方まで行って木刀を買って帰り、水道尻のとば口にあった共同便所の前で、さかんに振り廻していたら、通り合せたしづやに見つかってうしろから目隠しをされたことがあった。しづやは十五六からはたち頃まで、私の家にいた。健康体で、太っていて、豊頬で、血色がよく、細い眼をしていた。しづやの家は吉原土手の向うにあって、べつに縁つづきというわけではなかったが私の家とは同姓で、またしづやの弟は私の兄と同年で、同じく土手向うの待乳山小学校に通学していた。なかやもしづやも、私の家を暇取ってからも、時々顔出しにきた。しづやの後にきた婆やは、それほど長くは家にいなかったようである。