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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
年頃は十六七であった。えつやの髪に虱がいっぱい集っていたことを、母が呆れたように云っていたのを覚えている。家の玄関には大きな姿見が置いてあった。その前で、私はえつやから帯の間に新聞紙を折りたたんで心代りに入れることを教えられた。えつや自身そうしていた。私は新聞紙を挟んで幅広に帯を締め、そのうえに袴をつけて腹のとびでるほどにきつく紐を結んで、そうして学校へ行った。私はえつやに本を読んでもらった。えつやはいつもいやな顔をしないで読んでくれた。「深夜の人」「虎の面」などという西洋の活劇物や水戸黄門漫遊記などの類であった。えつやは西洋人の名前を読み損うことがあった。けれども私はえつやの朗読に殆ど満足していた。家では河鹿を飼っていた。湯河原かどこかで捕獲したものであった。夏になると、金網の中に放して縁先へ置いた。金網の中で、河鹿はその形に似げない可愛い声を出して鳴いた。私ははじめ河鹿の声を虫が鳴いているのだと思っていた。河鹿が鳴いていると家の者が云っても、私はかじかという虫が庭のどこかで鳴いているのだと思い、その声と金網の中にいる小さい醜い生物とを一つにしては考えなかった。