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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

菓子包を貰うのが目当のようであった。婆やは弟を可愛がっていたようだし、また弟も婆やを慕っていたようであった。そのうち婆やも暇取って行った。弟の死後、私にはこのことがなぜか弟の薄命をあかしするもののように思われた。

弟と一緒に湯に入ったときに、私が湯船の縁に手拭を垂らしてそれを股の間から引き出して、「車屋さんだよ。」と云うと、弟はいかにも可笑しそうに声を立てて笑った。私は何遍もその仕種をくり返した。弟はその度に面白がった。

弟も学校へ行くようになった。近所に弟の同級生がいた。その子は意地の悪い子で、自分は鞄の中にその教科書を入れておきながら、弟に向っては、きょうはその授業はないからと云って、強制的にその教科書を家に持ち帰らせるようなことをした。弟はその子に対しては、いつも唯々諾々としているようであった。

私もはにかみやであったが、弟は私に輪をかけたはにかみやであった。弟に比べれば、私はまだしも気の強いところがあった。

震災の当日、その時びっくりして戸外に飛び出した私の目に、八階から上が折れてなくなった、浅草公園の十二階の無慙な姿が映った。私の家は吉原遊廓のはずれにあって、家の前の広場からは、浅草公園の十二階がよく見えた。