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いもがゆ
薯粥
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页
「それで、……わしへの願いと申すのは」
「足軽衆への、稽古をお許しねがいたいと存じます」隼人はつつましく云った、「稽古は未明から日の出までとかぎり、お勤めには差支えのないように計らいます、如何でございましょうか」
「それだけのことならば別に仔細もないであろう、尤も一応は支配むきへその旨を申してやる、追て沙汰をするであろう」
「忝のうございます、よろしくお願い申上げます」隼人は、鄭重に挨拶をして辞去した。
その日のうちに、惣兵衛は足軽支配を呼んではなしをした。支配役は寧ろよろこんだ。ちかごろ足軽たちには、そういう機会がだんだんと少なくなり、このままではやがて武士としての心構えも疎くなるのではないかと惧れていた。早速その手配を致しましょうと非常な乗り気だった。……そして、それからひと月ほど経った。惣兵衛は繁務に追われてそのことはそのまま忘れ過していたが、或る日ふと思いだして、「いつぞやの浪人者はどうしておるか」と、足軽支配に訊いた、「足軽共は稽古にかよっておるか、道場のようすはどうだ」
「ただいま十人ほどかよっております」支配役はそう云って笑いながら、「みんななかなか熱心のようでございますが、道場というのが草原でございまして……」