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いもがゆ

薯粥

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页

青空文庫

こういう時こういう者たちに有りがちな無駄ばなしがでるでもなく、みんな黙って、いかにもてきぱきとした動作だった。……そのあいだに、向うでは十時隼人が、ひとりのまだ若い婦人(それが妻の七重だった)といっしょに、大きな鍋と椀箱を運んで来て草原へ据えた。

「支度ができました、来て坐って下さい」

隼人がそう呼びかけた。足軽たちは互いに眼を見交わしなにか頷き合いながら、近寄っていって鍋の前の草地へ坐った。そして隼人の妻が大鍋の蓋をとろうとしたとき、「頂戴するまえに今朝はひとつお願いがございます」と、一人が改まった態度で云いだした。「なにごとです」「わたくし共は、もう三十日あまりお稽古を受けにかよっております、稽古をつけて頂くうえに、十余人の者が毎朝こうして馳走にあずかりましては、忝ないと申上げるよりも却って心苦しいのです、甚だ申兼ねたことではございますが、御教授料としてではなくわたくし共の寸志と致しまして、今後そくばくの料をお受けが願いたいのでございます」「わたくし共、一同のお願いでございます」別の一人がそういい、みんながそこへ揃って手をついた。「是非おききとどけ下さいますよう」