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いもがゆ
薯粥
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页
「お志はよくわかるが、それはお断り申します」隼人は微笑しながらいった、「初めに申上げたとおり拙者は兵法家ではない、あなたがたに教えるのではなく、ごいっしょに武道の稽古をする修業者にすぎないのです、また一椀の薯粥は拙者から進ぜるものではなく、天の恵み国土の恩なのだ、拙者はただ、そのなかつぎをしているまでのことです、出来なくなれば仕方がないが出来るあいだは差上げますから、そんな心配は無用にして喰べて下さい、さあいっしょにやりましょう」誰もなにもいえなかった。妻女が盛りつける熱い薯粥の椀が配られると、隼人がまず箸をとり、みんな感動の溢れた表情で、うまそうに喰べはじめた。
惣兵衛はこれだけのことを見て、気づかれぬようにその場を去った。妙な気持だった。いま聞いた話のもようでは隼人は教授料も受けず、毎朝かれらに薯粥を出しているらしい。どういうつもりか見当もつかないが、なにかしら、尋常でないものが感じられる。殊に足軽たちの虔しい態度や、いかにもひたむきなようすがかれを驚かせた。――これは注意する要があるぞ、惣兵衛は自分が許可した責任者なので、そう思いながらそれからも時々そっと見にゆくことを続けた。