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やぶのうぐいす

藪の鶯

三宅 花圃

「藪の鶯」金港堂、1888(明治21)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,356 字 · 65 页

青空文庫

ツト入り来たりし男年ごろ二十四五なるべく。鼻筋とおり色白く。目もとは尋常に見ゆれども。どこともなくするどきところありて。いわゆる岩下の電ともいわまほし。口はむしろ小さすぎたるほどなるに。いささか八の字の鬚をたくわえたり。身長は人並みすぐれたるが。縞フラネルの薄きもて仕立てし。ジャケットに同じき色のズボンをはき。細きステッキを手にもちて。パナマハットの大形なるを頂き。わざと蝙蝠傘はもたざりけり。

女房「オヤマア駿河台の若殿様。お久しぶりでございます。この間御洋行からお帰りになりましたと。宮崎さんから伺いましたが。ようまア。

篠原「十日ばかりあとにもどったが。きょうはあんまりあついから。その宮崎と涼みに出かける約束だから今にくるだろう。屋根を一艘仕度してくんな」

女房「御酒はいりますか。お肴は。

篠原「ストックを三本ばかりと。肴は三通りばかり見つくろって。いずれどこへか上るのだから。たんとはいらない」という折りから。宮崎は斎藤とともに入り来たり。

斎藤「や。先に来るつもりだったが」という間に。船も出来たれば一同それにのりうつりたり。

宮崎「五年というと久しいようだったが。