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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

なにか新奇の工夫をと案じた末に、思い付いたのが裸体美人の写生画で、それを立派に表装して箱入りの贈り物にする。箱をあけて見て、これは妙案と感心させる趣向である。しかもその女が芸者や遊女では面白くない。さりとて堅気の娘がそんな注文に応ずる筈がない。結局、商売人と素人との中を取って、茶屋女のような種類に目をつけたのであるが、それとても選択がむずかしい。容貌がいいだけでもいけない。容貌もよし、姿も整って、年も若く、なるべく男を知らない女などという種々の注文をならべ立てると、その候補者はなかなか見いだせない。たとい見いだされたとしても、本人が不承知であればどうにもならない。

その選択に行き悩んで、白羽の矢を立てたのが喜多屋のお安であった。お安はそのころ十九の若い女で、すぐれた美人というのではないが、目鼻立ちの整った清らかな顔の持主で、背格好も肉付きもまず普通であった。船宿などに奉公する女であるから、どこか小粋でありながら、下卑ていない。身持もよくて、これまでに浮いた噂もないという。それらの条件に合格したのが、お安の幸か不幸か判らなかったが、ともかくも甚五郎はかれに目を付けた。