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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
その狐はわたしも見ました。由来、火薬庫の付近には古狐がたくさん棲んでいると伝えられているのですが、その狐が何かのいたずらをするつもりで、かえって哨兵に突き殺されたのだろうというのです。余り奇怪な話で、われわれには殆んど信じられないことですが、何をいうにも論より証拠で、そこに一匹の狐の死体が横たわっているのであるから仕方がない。どう考えても不思議なことであります。」
「実に不思議です。」と、佐山君も溜息をついた。ゆうべ逢った魚釣りの人もやはりその狐ではなかったかとも思われた。
戸塚特務曹長が平素から非常にまじめな人物であることを佐山君はよく知っていた。口では信じられないと言いながらも、特務曹長は眼のあたりに見せ付けられたこの不思議を、あくまでも不思議の出来事として素直に承認するよりほかはないらしかった。話はこれでひとまず途切れて、二人は黙って丘の裾までゆき着いた。すすきや茅が一面に生い茂っている中に、ただひと筋の細い路が蛇のようにうねっているのを、二人はやはり黙って登って行った。頭の上からは枯れた木の葉が時々ひらひらと落ちて来た。
「大尉殿に化けた狐が殺されたのは、この辺だそうです。