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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

」

ここで夕飯の馳走になって、二人は好きな勝負に時の移るのを忘れていた。秋山の屋敷ではその出先を知っているので、どうで今夜は遅かろうと予期していたが、やがて四つ(午後十時)に近くなって、雨はいよいよ降りしきって来たので、中間の仙助に雨具を持たせて主人を迎えにやった。

「明日のお勤めもござります。もうそろそろお帰りになりましてはいかが。」

迎えの口上を聞いて、秋山も夜のふけたのに気がついた。今夜のかたき討は又近日と約束して、仙助と一緒にここを出ると、秋の夜の寒さが俄かに身にしみるように覚えた。仙助の話では、さっきよりも小降りになったとの事であったが、それでも雨の音が明らかにきこえて、いくらか西風もまじっているようであった。そこらの町家はみな表の戸を締切って、暗い往来にほとんど灯のかげは見えなかったが、その時代の人は暗い夜道に馴れているので、中間の持っている提灯一つの光りをたよりに、秋山は富島町と川口町とのあいだを通りぬけて、亀島橋にさしかかった。

橋の上は風も強い。秋山は傘を傾けて渡りかかると、うしろから不意に声をかけた者があった。

「旦那の御吟味は違っております。