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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

それは磯貝から預かっていた金をそのまま着服したことが露見した為である。二十四日は無事。

二十五日、陰。微雨。――宇都宮から田島さん来たる。磯貝殺しの犯人は、鹿沼町の某会社の職工にて、昨夜再び日光の町へ入り込みしところを折井刑事に捕縛されたりという。その職工は小せんの情夫にはあらず、情夫の朋輩にて小牧なにがしという者なり。田島さんの報告によれば、小牧は東京にて相当の生活を営みいたりしが、磯貝の父のために財産を差押えられ、妻子にわかれて流転の末に、鹿沼の町にて職工となりたる也。兇行の当夜は小せんの情夫と共に日光に来たり、ある料理店にて小せんと三人で遊んでいるうちに、小せんは二階から往来をみおろして、あれは東京の磯貝という客だと教えしより、泥酔していた小牧は、むかしの恨みを思い出してむらむらと殺意を生じ、納涼に行く振りをして表へ飛び出し、彼のあとをつけて含満ヶ渕まで行くと、磯貝は誰やらとしきりに言い争っている様子なり。それがいよいよ彼の反感を挑発して、突然に飛びかかって磯貝の咽喉を絞めつけ、そこへ突き倒して逃げ帰りしなりという。

磯貝の言い争っていた男は即ち六兵衛老人なり。