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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
年のゆかない私どもには、それが大変さびしいように思われましたが、これも御時節で仕方もございません。
その六月の二十六日とおぼえています。その頃わたくしは近所の裁縫のお師匠さんへかよっていましたので、お午ごろに帰って来まして、ちょうど自分の家の横町へはいりかかりますと、家から二、三間手前のところに男と女が立っていまして、男はわたくしの家を指さし、女に何か小声で話しているらしいのでございます。何だかおかしいと思ってよく見ると、その男は会津屋の叔父で、女は二十二、三ぐらいの粋な風俗、どうも堅気の人とは見えないのでした。叔父さんがあんな女を連れて来て、わたくしの家を指してなんの話をしているのかと、いよいよ不思議に思いながらだんだんに近寄って行きますと、叔父はわたくしの足音に気がついて、こっちを急に振向きましたが、そのまま黙って女と一緒に、むこうの方へ行ってしまいました。
「今、叔父さんが家の前に立っていましたよ。」
わたくしは家へ帰ってその話をすると、母も妙な顔をしていました。
「そうかえ。叔父さんがそんな女と一緒に……。家へは寄って行かなかったよ。」
「じゃあ、阿母さんは知らないの。