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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

それはむしろ好機会であると思ったので、お筆はよんどころないような顔をして、お蝶と友之助との秘密をあばいてしまった。それがお銀をおどろかし、溝口夫婦をおどろかして、結局はお蝶と友之助との結婚を早めることになった。秘密が暴露した夜に、友之助が長い手紙をかいていたのは、おそらくお筆にあてたもので、自分たちの秘密をあばいたのを怨んだものか、あるいは自分の魂はいつまでもお筆のふところにはいっていると訴えたものか、又それに対してお筆がどんな返事をあたえたか、あるいはなんにも返事をしなかったか、それらの事情はもちろん判らない。

いずれにしても縁談は滑るように進行して、結婚の吉日が切迫して来た。小野の話によって想像すると、お蝶の縁談がいよいよ決定すると共に、お筆はもう誰に遠慮することもないという風で、ますます吉之助の方へ接近して行ったらしい。それを見せつけられて、お蝶の胸の火は燃えあがった。しかも友之助にわが身を許してしまったという弱味がある以上、彼女は今更どうすることも出来なかった。彼女はお筆の罠にかかって、自分のほんとうの恋人を横取りされたことを覚ったかも知れないが、今となっては恨みを呑んでその勝鬨の声を聞くのほかはなかった。