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ひょうしゃくかんにんき

評釈勘忍記

山本 周五郎

「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页

青空文庫

「なるほど」千蔵はこう頷いた。

「おれの云う意味がわかったか、思い当ることがあったか」

「わかりました、然し、――」

彼は感に耐えたという風に首を傾げながら、つい知らず小さい声で、やっぱりじじい覚えてけつかったと呟いた。この呟きは老人に聞えたが、それは老人を怒らせるよりも寧ろ復讐の快感に酔わせたくらいで、一石二鳥とは即ちここを指して云ったものである。

「ここをよく考えろ千蔵、この世の凡ては因果の律に支配されておる、おまえが生れたのはおまえの父と母とが、――えへん、広大な、詰りそうしたことが、原因となっておる、花は蝶に蜜を与えて実を結び、源氏を滅ぼしたことに因って、平氏は源氏に滅ぼされる、因果は昭彰として無駄も掛け値もない、だからして、わかり易く云えば、ここにおまえの癪に障る人間がいて、一つぶん殴ってやろうとするとき、こいつは今おれに肚を立てさせたが、こいつがおれに肚を立てさせるようなことをするようなことをおれにこいつが、いやおれが、こいつが、いや待て」老人はどうやら修辞法の網にひっかかって汗をかきだした、「詰りこうだ、このおれがおまえとする、いいか、そこでおまえのこいつがおれのおまえに肚を立てさせるとするだろう、そこでおれのおまえがおまえのこいつに、おれのおまえに肚を立てさせるようなことをおまえのおれが、こいつ