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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
兎に角下りよう」
と堀尾君は承知して、手を振り払いさま、出口へ急いだ。
「野郎、逃げるな」
と相手は二人の仲間諸共後を追った。
「喧嘩だ/\」
と五六名の弥次馬がドヤ/\下りた。
褞袍連中は恐らく堀尾君を取っ占めて酒にする積りだったろう。しかし堀尾君は峠の喧嘩の中学生時代から決して飲ませない方針だった。
「やい、若造。おれ達を何だと思う?」
と相手は堀尾君を甘く見て、先ず論判に取りかゝった。それに対する堀尾君の返答は一番手近にいた奴の鼻を思いさま撲ることだった。鼻血が迸った。その始末に気を取られる間に二人を片付けようという予定の行動に外ならない。三人に一人だから尋常の勝負では危いと思ったのである。果して残る二人が飛びかゝった。
「待て!」
と、この時、間に割り込んだものがあった。それは今迄同じ車に乗っていた大学生だった。
「邪魔だ。退け!」
と褞袍の一人は押すより早く足を掬われてった。
「僕が此奴を引受けます」
と大学生は助太刀だった。一人と一人なら、堀尾君は仕事が楽だった。撲り合いを一しきり続けた後、組んでから早かった。散々打ち※(「足へん+倍のつくり」、第3水準1-92-37)した。