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あかいカブトムシ
赤いカブトムシ
江戸川 乱歩
「たのしい三年生」講談社、1958(昭和33)年4月~1959(昭和34)年3月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 23,237 字 · 47 页
それに、ユウ子ちゃんは、女の子ですから、まもってやらなければなりません。小林くんは、両手で、ノロちゃんとユウ子ちゃんの手をひいて、すすんでいきます。すこし行くと、ほらあなのまがりかどへ来ました。
そこをひょいとまがると、みんなは「あっ。」といったまま、たちすくんでしまいました。すぐ目の前に、とほうもなく大きなばけものがうずくまっていたからです。そのかおはきいろで、まっ黒なふといしまがついていました。せんめんきほどの大きな目が、やみの中で光っていました。
ステッキをたばにしたような、ふといひげのはえた大きな口、その口から二本の白いきばが、にゅっとつき出ています。トラを百ばいも大きくしたようなばけものです。そのおそろしいかおが、ほらあないっぱいになって、あごが、じめんについているのです。
どこからか、なまぐさい、強い風がふきつけてきました。
「うへへへへ……。かわいい子どもたちが来たな。おいしそうなごちそうだ。いま、たべてやるからな。うへへへへ……。」
おばけのトラが、そんなことをいって、ぶきみにわらいました。その声が、ほらあなにこだまして、なんともいえないおそろしさです。