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あかいカブトムシ

赤いカブトムシ

江戸川 乱歩

「たのしい三年生」講談社、1958(昭和33)年4月~1959(昭和34)年3月

N4 · 入门 · 新字新假名 · 23,237 字 · 47 页

青空文庫

11

ちか室のてんじょうが大きく開いて、おとなの三ばいもあるせいどうのまじんが、ふわふわとちゅうにうき、そのまま空の方へまい上がっていきました。

まじんの足にしがみついていた井上一郎くんも、いっしょに、空へまい上がっていくのです。

「おうい、井上君、手をはなせよ。そして、下へとびおりるんだっ。」

下から、小林くんが、大声でさけびました。

まじんの足は、ちか室のゆかから、もう三メートルもうき上がっていましたが、井上くんは思い切って手をはなし、ぱっととびおりました。

そして、コンクリートのゆかにしりもちをついて、かおをしかめています。

「あいつ、赤いカブトムシを口に入れたまま、とんでいってしまったよ。早く追っかけなけりゃあ。」

「よしっ。なわばしごだっ。」

小林くんはそうさけぶと、おなかのシャツの下にまきつけていた、じょうぶなきぬひものなわばしごをするするとほどいて、その一方のはしについている鉄のかぎを、開いたてんじょうへ投げ上げました。

なん度もしくじったあとで、やっとそのかぎが、てんじょうのあなのふちにひっかかったのです。

しょうねんたんていだんのなわばしごは、一本のきぬひもです。