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てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 42 页
私はつくづく夫人の姿を眺めて感心した。ほんとに巧いものだ。どう見直したって男だ。態度だって、表情だって、すっかり男になり切っている。女らしい影はどこを探したって見出せやしない。
S夫人と私はどっちから誘うともなく仲店に入り、人込みにもまれながら肩を並べて歩いていた。
観音様の横手の裏通りにはサーカスがかかっていた。その広告びらの前に夫人は立ち止って少時見ていたが、急に入ってみようと云い出した。事件の調査に来たと云うのにどうしたっていうんだろう。私がちょっと返事に躊躇しているのを見ると彼女は誘いかけるように云うのだった。
「面白そうじゃないの。南洋踊り、鉄の処女、ほら人喰人種もいますよ」
「鉄の処女って何の事でございますの?」
「昔死刑に用いられたものですよ。大きな箱のようなものの内側に剱の歯がいっぱい突き出ていて、囚人をその中に入れ、扉を閉めると同時に体中に剱が突き刺るという仕掛けなんですよ」
「面白そうでございますわね。じゃ入ってみましょうか」
「人間は誰だって残虐性をもってるのね――」
夫人はちょっと皮肉そうに云って笑っていたが急に真面目な顔をして附加えた。