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てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 42 页
「実をいうとね、ある女を探しているんです。サーカスにいる花形なんですがね、しかしどこのサーカスにいるかは分らないんです。だから貴女の気がすすまないなら私一人でも入ってみるわ」
二人は早速入場券を買った。
舞台では南洋踊りというのがもう始まっていた。獰猛な顔付をした逞しい男が五六人、真赤に染めた厚い唇を翻えして訳のわからない歌を怒鳴りながら、輪をつくって踊っている、その真中に酋長の娘とでも云いたいような、若い女と一疋の大狒々とがふざけ散らしながら、お客さん達に盛んに愛嬌をふりまいている。滑稽な身振りをして見せるものだから、見物人は大喜びだ。
「あの狒々の野郎うまくやってやがらあ」
「真物かな」
「さあ?」
「奴さん、なかなか味をやるじゃねえか」
「しかし――。巧いぞ、男かね、女かね」
「女だったらどうする?」
「別嬪なら取って喰うか」
「馬鹿野郎、別嬪が何もわざわざ狒々の皮を被るかよ」
「女にしたところでどうせ醜婦さ。見やがれ。二度びっくりだ」
こんな会話に気を取られているうちに、いつか踊がすんで、舞台にはピエロが出てしきりに口上を述べている。それによると美しき酋長の娘に思いをよせた狒々は、余り浮かれ過ぎて悪巫山戯をしたので、遂に酋長の憤りを買って捕えられ、『鉄の処女』