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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控(五)金の鯉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、随筆銭形平次。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 页

青空文庫

三

万三郎の袖の蔭から、恐怖に引きつった蒼白い顔を覗かせているのは、踊りの師匠のお才、二十七八の中年増ですが、商売柄身のこなしの鮮やかな水際立って美しい女です。しかしこれとても人間の眼の中へ、銀簪を三寸も叩き込める柄ではありません。

最後にまだ船の中に残っている船頭の直助があります。三十前後の独り者で、人は好いが酒癖の悪い男、疑えばまずこれが一番疑われる地位にあります。

平次は腕を拱いて凝と考え込みました。

川をわたる夜の風が、六月といっても少し冷え冷えとして、初更過ぎの江戸の静かさは、何とはなしに身に沁みます。

その時、

「銭形の兄哥、御苦労だったね、俺らが来た上は、もう引取っても構わないよ」

棘々した言葉、白い眼。

顔を挙げると、平次と張合って手柄を争う石原の利助が、四十男の押の強そうな顔を、皆んなの後ろから覗かせているのでした。

三

「平次」

「ヘエ」

「わざわざ来て貰って気の毒だったな」

「どう致しまして、――御用は何でございましょう」

若い与力笹野新三郎の屋敷に呼出された平次は、敷居の外から額越しにこう見上げました。与力と岡っ引では、身分に大変な隔りがありますから、許されなければ、敷居の内へ入るなどとは思いもよりません。