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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控(五)金の鯉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、随筆銭形平次。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 页

青空文庫

三

女房のお豊も、寝巻姿のままで飛出して来ましたが、主人治兵衛が、庭石の上にドッカと腰を下ろして、狐につままれたような顔をしているのを見るだけ、傾く月影にすかしても、猫の子一匹隠れる場所があろうとも思われません。

三

「親分、こういうわけだ。親としては、これほどの歎きはない、死んだなら死んだでもいい、せめてその葬式だけでも出してやりたい、と思うのも無理はありますまい」

近江屋の主人治兵衛、ちょうど折よく訪ねて行った、銭形の平次を奥へ招じ入れて、娘の行方不明になった後前から、空の葬式を出した経緯まで詳しく話しました。

「お察し申します。が、それは世間で言うように、やはりお嬢さんの幽霊の望みでなすったのでしょうか」

「とんでもない。娘はそれからも二三度姿を見せましたが、一言も口を利くことはございません。空葬式を出せと言ったのは、それ、伝法院の前にいつも出ているあの易者――」

「ヘエ――」

「観相院とかいう髯を生やした易者の勧めでしたよ」

「ヘエ――」

「あまり娘が可哀相で、死んだ者なら遺骸を探し出して、せめて葬式だけでも出してやりたいと、家内が頻りに言うので、観相院へ行って易を立てて貰うと、――これはいけない、娘さんの遺骸は、海の沖へ流れてしまったから、二度と再びこの世の人の目に触れることではない。