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ながやてんいちぼう

長屋天一坊

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页

青空文庫

「ああそうだよ、みんなねえ、そう云うよ、あたいのことをね、うす馬鹿だって、みんなそう云うけどねえ、あたいはそんなねえ、うす馬鹿じゃありゃしない、これでもねえ、あたいは、ごや、……ごやく、ごやくいんなんだってよ、もの凄いような、本当だよ、ごやく、ごや、ごやくいんだかやねえ、よきに取り扱え」

「それみろ、聞いたかいまのお言葉を」吾助は荘重な眼つきをした、「御落胤をごやくいんと仰しゃる、この下情に通じていらっしゃらぬところが、おまえたちにはわからねえのは情けない、実に涙がこぼれる、御自分からうす馬鹿ではないと仰しゃる御胸中、あッあ、おいたわしいと、おまえたちが思わないということは、女はさてさて浅墓なものなるかな」

「浅はねえ、ああ、浅はあたい知ってるよ」若者はにたにた笑い、貧乏ゆすりをする、「あいつはうす馬鹿だぜ、本当だよ、あいつねえ、あたいの貰いをねえ、取っちゃうんだ、けれどもあたいは、いまに、いまに、……あたいはいまに、おだ、おだいもくになるんだってよ、そ云ったよ、本当だよ、本当にあの人がそ云ったぜ」

「おだいもくと仰しゃるのはお大名ということだ、いいか」