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かみなりもんいほく

雷門以北

久保田 万太郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页

青空文庫

そうしていまよりもっと薄暗い、陰気な、せせッこましいそのみちの感じは、そのガタ馬車の、しば/\馬にむちを加える苛酷な御者の、その腰にさびしく巻きつけられた赤い古毛布のいろがよくそれを語っていた……とわたしはかすかにおぼえている。

だから、わたしの、学校で毎日顔をみ合わせる友だちは、南は並木、駒形、材木町、茶屋町(まえにいったように、すこしのところで、わたしの近所からはあんまり通わなかった)北はその花川戸、山の宿、金竜山下瓦町。――猿若町、聖天町を経て、遠く吉野山谷あたりから来るものばかりだった。まれには「吉原」からもかよって来た。――というといまでもわたしの覚えているのは、まだわたしの尋常二、三年の時分、運動場にならんでこれから教場へ入ろうとするとき、その水を打ったような中で、突然うしろから、肩さきをつかんでわたしは列外に引ずり出された。そのまま、運動の真ん中に、一人みっともなくとり残されたことがあった……

わたしの記憶にもしあやまりがなければ、わたしはそのとき泣かなかった。なぜならどうしてそんな目にあうのか自分によく分らなかったから。それには、それまで、柔和しいというよりはいくじのないといったほうがほんとうの、からきしだらしのなかった、臆病だった、そのくせいたってみえ坊だったわたしは、いまだ嘗て、そうした