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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

ときめつけ、土田の手を掴んで外へ出た。枡平ではおみのが給仕にあらわれ、十太夫としきりにやりあったが、土田は聞くだけで話には加わらず、しまいには肘枕で横になってしまった。

二人の生活は完全にもとどおりになった。十太夫に子供が生れ、土田正三郎は父の隠居で中老職を継いだ。そして記録所頭取を兼任することになったが、相変らず十太夫は「おい、飲みにいこう」とか、「道場で一本つきあってくれ」とか、云ってとび込んで来るし、そうでなければ土田のほうからでかけてゆき、どちらにせよ下城のときは必ず二人いっしょだった。一般にはこういう関係は嫌われるか、笑い話にされるものだが、この場合はごく自然に受けいれられ、家中の人たちはむしろ好感をもって二人を見ていたばかりでなく、長島藩の「名物」というふうに考えていたようである。一例をあげると、或るとき十太夫に江戸詰の沙汰が出た。小姓頭という役目だから、もうとっくに江戸詰に当っていなければならなかったのだが、精武館道場の師範であるため延びていた。それがいよいよ延ばせなくなったわけで、その沙汰を申し渡すことになったのだが、老職たちの中から誰が云いだすともなく、十太夫を江戸へやるなら土田も江戸へやらなければなるまい、という説が出た。