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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「や、や……」とうろたえる者を睥睨して、

「蜂須賀の方々へ、ちと申し入れたい儀があって、ここにてお待ちうけ致していた。とにかく、この二挺の駕をお止めなさい!」

と、身をかためて、目に余る一行の道を阻めた。

「なにッ」

聞くより九鬼弥助は、刀のこじりをはね上げて、弦之丞の姿へ目をいからしつつ、

「知らぬことならとにかく、吾々を蜂須賀家の者と知って足を止めよとは言語道断だ。一体汝はどこのうろたえ者だッ」

「もう、見忘れ召されたか――」と、弦之丞は片手で天蓋の紐を解いた。それは、早くも八方の敵をうける用意である。

「――いつぞや川長の門口で、お志の鳥目を浴びたあげく、その夜裏庭では各※(二の字点、1-2-22)のお手の内まで拝見いたした虚無僧でござる」

「えっ……」弥助は胆をヒヤリとさせたが、怯みをみせまいとするのであろう、なおも、額に青筋をうねらせて、

「おお、その虚無僧がどうしたというのだ。何のゆえにこの駕を止めるのだ」

「されば、もとよりその夜の意趣遺恨ではなく、拙者の知人である銀五郎と、ほか一名の者が、故なくして、方々に捕われたと聞き、お下げ渡しを願いに出たのでござる」