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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「あるどころか、彼らの暗中飛躍こそ怖るべきで――」と竹屋三位が、這個の消息通をもって任じながら、

「第一に、吾々たちに御当家という後ろ楯のあることを観破した者は、江戸方の隠密甲賀世阿弥。これは、御本国剣山の山牢に、終身押しこめてありますゆえまず安心。ところがここにまた、天満浪人の常木鴻山、俵一八郎などと申す者あって、江戸の隠密どもと結託なし、御当家の内秘を探りにかかっております」

「すりゃ大事、また宝暦の轍をふむことになろうも知れぬ……」右少将は色をかえた。

「しかし、御安心なさるがよろしい」

竹屋三位卿、わが手功のように、

「鴻山は住吉村から追っ払い、また一八郎はすみやかに召し捕りました。やがてこれも剣山へ送って、世阿弥同様、終身間者牢の住人となりますわけで……」

「やれ、それは何よりな」

「水も洩らしは致しませぬ。御明敏な重喜公、それに、不肖三位有村が帷幕にあっていたしますこと」

「ははははは……」と、それまで黙っていた阿波守は、いじけずにして濶達で、若々しい居候の言葉が気に入ったらしく哄笑した。そしてすぐに真顔になり、

「余事はおいて三卿の方々、かねて、諸方へつかわしました密使の模様は?」