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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

喜撰風呂の奥にいるお十夜と周馬は、弦之丞を討つ機会をつかめずお綱やお千絵の消息も知れずに、ただ、いらいらと暮らしている。今日も二人は酔っていた。そのご機嫌を見計らって、取りまきの湯女のお勘とお千代が、しきりに浅草の景気をそそったので、つい、駕を四つあつらえてしまった。

茶屋町で駕を降りる――そして二人は二人の湯女を連れて、いい身分でもありそうに、仲店から観音堂の界隈へわたる、羽子板市のすばらしい景気の雰囲気につつまれて行った。

「あら、いいこと」

「もう、ふるいつきたいねエ」

「成田屋の暫――」

「あたい、浜村屋が好きさ、菊之丞の女鳴神――当たったねえ、あの狂言は」

「佐野川万菊、悪くないね」

「あれは?」

「宗十郎じゃないか、梅の由兵衛だよ。あの由兵衛のかぶっている頭巾から、宗十郎頭巾というのが、今年の冬たいへんな流行になったンだとさ」

「オヤ、お十夜さんみたいだね」

湯女のお勘とお千代が、こくめいに、端から一軒ごとに見て歩くので、周馬と孫兵衛は、つまらない所へ来たものだと、今さら人に揉まれて後悔している。こういう所へ来ると、女を連れてきた男は、いつも女の随属になって、吾ながらテレた顔を撫でているよりほかはない。