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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

そしてやがて、

普化宗江戸番所、一月寺末頭――

山門の札を読んで立った二人は静かな寺内へ入って、松の多い境内を見廻した。ここは、勤詮派の虚無僧が足だよりとする宿寺であるので、境内へ入ると、稽古の尺八や一節切の音がゆかしくもれて聞こえた。

万吉が訪れて、ここに、法月弦之丞という者が、宿泊しているかどうかという由をただすと、院代の者が寄宿帳を繰ってみて、

「うむ……法月弦之丞……寄竹派の者でござるが、都合によってお泊め申してある。どういう御用向きでござりますな」

「じゃあ、たしかにおいででございますか――」

万吉は初めてホッと安心した。

お綱はそのうしろに待ちながら、もう、奥から洩れる一節切の音に、吾を覚えず胸騒ぎをさせていた。

「――では、まことに恐れいりますが、万吉という者がお目にかかりにまいったとお取次ぎ願います。へい、万吉とさえおっしゃって下さりゃ、ご存じの筈でございますから」

「ああさようでござるか。では、六刻過ぎに出なおしてお訪ね下さい。その御人は、今朝から市中へ合力に出ておられます」

「へえ、では今はお留守でございますか」

「夕景には戻られるであろう。