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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

思いあたって、お綱の顔色をソッと覗くと、お綱も酒の気をさまして、まっ青になっていた。

「万吉さん、ちょッと待っていておくれな」眼色を変えて駈けだしたので、かれもただちに、

「おれも行く!」

こういって後から続いた。

が、すでにそこには、寄っても付けない人だかりとなっていた。角兵衛獅子のお三輪と乙吉は、蹴仆されたまま土まみれとなって、オイオイ泣き声をあげている様子。

「この餓鬼め!」と、その上にも土足をあげて、この抵抗力のない姉弟をさいなんでいる三人組の浪人は、よりによってたくましい者ばかりだ。ふと見ると、それは自来也鞘をおびた天堂一角と、総髪の旅川周馬とお十夜孫兵衛なのである。

「まあ、いい加減にゆるしてやれ」

あまり人だかりがしてきたので、周馬がこういうと、孫兵衛は頑として、

「いいや、いけねえ」と、姉弟の襟がみを両の手に吊るして、

「今日だけのことならとにかく、いつぞやも山の宿の河岸ッぷちで、おれと天堂一角との話を立ち聞きして、なにやら悪たいをついて逃げやがったのだ。これッ、あの時の角兵衛獅子も、たしかにてめえたちに違いなかろう」

「あッ――小父さん! かんにんして」