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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

こう考えあわせてみると、その黒幕に、阿波という謎の強国が、ありありと浮かんでくる。

禍根は阿波だ。

公卿を踊らす者は阿波だ。無禄の兵学者を踊らすものは公卿だ。不平な浪人を踊らすものは兵学者だ。まず、この禍いの根を刈るには鴻山のいうがごとく、阿波の密謀をさぐり、その確証をつかんで、取りひしいでしまわなければならぬ。

こう気づいたので、左京之介は、鴻山を自邸にとめて、密かに、いろいろな便宜を与えることを約した。

で、鴻山は、まず、弦之丞と万吉を見出して、力を協せたいと願った。また一方には、世阿弥の残した、甲賀家のあとの様子、お千絵の身などについても、ぽつぽつと調べていた。

だから、お綱のあきれるほど、すべてを知っていたわけである。

けれど、一つ困っていることがある。

そのために鴻山は、今日も自身で、源内秘伝の蘭薬を買いに出かけたのだが、はたして、それが利くかどうか、すくなからぬ心配である。

というのは。

大火の晩に、この屋敷へ運んできたお千絵が、あのまま、意識を狂わして、気はついても、あらぬことのみ口走っている。

医薬の利かぬ、もの狂いの兆がみえる。