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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「おっしゃられてみれば、まことに、ごもっともでございます」と、引き退るよりほかにない。

「折があったら、よく言い悟して、得心させておくがよい」

「なんとか、諦めさせましょう」と、ぜひなく答えたものの、いつか板挟みになっている万吉、肚の底では、密かに弱りぬいている。

「オオ、話がそれた――」と、弦之丞は改まって、「ご苦労だが、今日は一つ頼みがある。この密封の書付を持って、大急ぎにまいってくれい」

「承知しました。して行く先は?」

「辰の口の評定所――あの右側の御門にある目安箱へ、この上書をソッと投げ込んで来てくれまいか――つまりこの一書は、弦之丞がいよいよ阿波へ発足する口火となるもの。早速、行ってきて貰いたい」

「エ?」と万吉。それへ出された密封の書付へ目をみはって、

「では、これを評定所の目安箱へ、ほうりこんでこいとおっしゃいますか」

「そうじゃ。ちょうどきょうは七の日にあたる。月に三度の御開錠日。目安箱が柳営へあがる日である、午の刻を過ぎぬうちに、急いでそれを入れてきてくれい」

「かしこまりました」

帯をしめなおして、三尺と臍の間へ、シッカリとそれをしまいこんだ。