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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「よウし!」一角の肚がきまッた。「多少の心得はあろうとも、およそは知れた虚無僧ずれ、その構えを割りつけて、天蓋から肋の下までただ一刀!」

漲りだした殺念は眼にあらわれてものすごい。月光を吸いきった三尺たらず無銘のわざ刀、かつ然と鍔鳴りさせて天蓋の影へ斬りかかった。

「ム!」と相手も気を含んだ。尺八の穴みなビューッと鳴って、一角の大刀を大輪に払うと、払われたほうは気を焦って、さっとその切ッ尖を足下からずり上げる。

途端に、どこから飛んできたか一枚の小皿、闇の空から斜めに風を切ってきた。

「あっ!」とかわすと、またすぐに一枚の小さな皿、独楽のように吹ッ飛んできて、柄手を翳した一角の刀の鍔にあたってパッと砕ける。

「うッ……」粉になった瀬戸のかけらに、目をつぶされたのか一角は、片手で顔を抑えたままバラバラとそこを離れて大声に、

「御両所ッ、今宵のところは引きあげろ!」と、叫んだ後も目に手を当てて、虚無僧の入ってきた裏門から一散に外へ走りだした。

阿波の原士の中でも、剛の者といわれている一角が、なぜか真っ先に走ったので、九鬼も森も対手を捨てて、空しく川長を飛び出してしまった。