轻松读懂日语经典作品
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う
鵜
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页
「見やしないよ」半三郎は濡縁のほうへ出てみた、「舟が出せるんだな」
ただこも出ていって、彼と並んだ。
「よければ舟で網をうって、捕った魚を舟の中で喰べることもできますわ」
「池の魚をか」
「加能川から水を引いてあるんです」ただこが云った、「だから川の魚がいろいろ捕れるんです」
「むかしから知ってるんだな」
「小さいじぶん父や母たちとよく来ましたわ」
「ただこのじぶんか」
「ええ、ただこのじぶん」
半三郎は片手をそっと彼女の肩へかけた。ただこは頭を傾げて、肩の上の彼の手へ頬をよせた。彼女の頬は熱く、冷たい髪毛には香油が匂っていた。
食事はうまかった。鮎の作身と塩焼、牛蒡と新芽の胡麻和え、椀は山三つ葉と鮒、煎鳥に銀杏の鉢と、田楽、ひたしといった献立だった。――今日は食事をするだけ、という約束で、ほかのことには話は触れなかった。そのくせ、ただこは彼の小さいじぶんのことを聞きたがり、いくら話しても、飽きずにあとをせがんだ。
「呆れた方ねえ」とただこは笑った、「あなたの話は喧嘩と叱られたことばかりじゃありませんか」
「釣りをしていれば無事なんだ」
「それはそうよ、――」しかし彼女はふと眼を伏せた、「でも、こんなことになってみると、その釣りさえも無事ではなかったわけだわ」