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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

結局行きついた所は、郊外戸山ヶ原のはずれの実に淋しい場所に、ポツンと建っている古い洋館で、場所といい建物といい、何となく不気味な感じがする上に、自動車を見ていると、いつの間に乗っていたのか、不二子さんが降りたあとから、もう一人の人物が、ヒョイと飛降りて、素早く洋館の中へ姿を消してしまったが、ヘッドライトの反射の薄あかりで、チラと見えたのは、確かに金色の顔、金色の衣裳、噂に聞く黄金仮面に相違なかった。

建物は窓という窓が密閉されていて、少しも光が洩れず、隙見をする箇所もなかったし、チラと見た怪物の姿にど胆を抜かれた老人は、逃げる様に帰宅して、惶しく事の次第を報告した。

アア、何たることだ。大鳥家の令嬢ともあろう人が、如何に魔がさせばとて、怪賊黄金仮面と媾曳をしようとは。

だが、それ丈けなればまだしも、もっといけないことは、ある日大鳥氏が用事があって土蔵へ這入って見ると、数日前まで確かにあった、家宝「紫式部日記絵巻」を納めた箱が紛失していることに気づいた。しかもつい二三日前、用もない不二子が土蔵へ這入っているのを見たという者がある。色々詮議して見たが、外に疑わしい人物はないのだ。