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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
続いて人の怒鳴る声、ドアを乱打する様な物音。
十数名の刑事は、それを聞くと、皆歩きまわるのをやめて、ピッタリ、静まりかえってしまった。
「今のはピストルだね。どこだろう」
だが、迷路の様に折れ曲った建物のこととて急には見当がつかぬ。
「聞き給え。何かにぶつかる音は、確かに天井から響いて来る。二階らしいぜ」
そう云えば、成程二階らしい。贅沢な建築の厚い床を隔てているので、物音は極く幽かにしか漏れて来ぬが、方角は確かに天井の上からだ。
「行って見よう」
一人が先頭に立って走ると、一同ドヤドヤとそれに続く。五色の部屋部屋を通り過ぎ、大階段を昇ると、案の定、物音が大きく聞えて来る。
長い廊下の突当りにドアが見える。
そのドアに中から誰かがぶつかっているらしいのだ。もう鏡板の一箇所が、メリメリと破れかけている。
「誰だ、誰です、そこにいるのは?」
一人が大声に誰何した。
「警視庁の者だ。アア、君達だね。一体どこへ行っていたのだ。ルージェール伯爵は捉えたか」
波越警部の声が聞えて来た。
不思議、不思議、警部は確かに階下の黒い部屋から出なかった筈だ。それがいつの間に二階へ上ってしまったのだろう。