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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
十分ばかり、生人形みたいに身体を強直させてじっとしていたが、少し気が静まったので、思い切って、枕元の呼鈴を押そうと、ソッと手を伸ばしかけると、部屋の隅に垂れている天鵞絨のカーテンが、まるで警告でもする様に、モクモクと動き始めた。
「アア、そうだ。やっぱりあの蔭に人が隠れているのだ」
と思うと、絹枝さんは恐怖の余り、手は伸ばしたまま云う事を利かなくなり、目はカーテンに釘づけになって、そらそうにもそらせないのだ。
カーテンはモクモクと動きながら、その合せ目が、少しずつ、少しずつ開いて行く。
一分、二分、開くに従って、合せ目の細い隙間からギラギラと光る物体が現れ、それが徐々に徐々に、最初は金の糸の様に、やがて金の棒となり、遂に一箇不可思議な金製の人の顔と拡がって行った。
黄金仮面!
絹枝さんは新聞や人の話で、世にも恐ろしい黄金仮面の噂を知っていた。その黄金仮面が、広い洋館に一人ぼっちの、彼女の寝室へ忍び込もうとは。余りのことに信じられぬ程だ。悪夢かしら、悪夢なら早く醒めよと祈ったが、決して決して夢ではない。
黄金仮面は、不気味に無表情な、糸の様な目でじっとこちらを睨んでいる。