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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
そして、一休みすると、又頂上へと蠕動だ。
遂に、遂に、彼の右手は頂上の柱を掴んだ。手係りさえ出来れば、もう何の危いことはない。彼はその柱を力に、百五十尺の大空に突立上った。颯爽たる金色の空の勇士。妙な心理だ。群集は賊が安全になったのを見て、やっと胸撫で下した。
この離れ業の間、屋根の下の警官隊は、空しく騒ぐのみであった。いかに勇敢な警官も、この切っ立てた屋根へ昇る元気はない。人間業では出来ぬことだ。と云って、ピストルで脅かそうにも、屋根の出張りが邪魔になって、賊の姿を見ることさえ不可能だ。
頂上の部屋から、急拵えの足場を組んで、賊を逮捕しようという説も出たが、賊のポケットにはピストルがある。足場を組んで、少しでも屋根の出張りの外へ頭を出せば、忽ち上からピストルのお見舞だ。どんな仕事師だって、そんな険呑な仕事を引受ける者はない。
で色々議論の末、結局一同地上に降りて、そこから銃をさし向け、その威力で賊を降服させようということになり、附近の有志が持出した鳥銃や、憲兵隊の鉄砲を借りて、十数梃の筒先を揃え、空砲を放ったりして、しきりに威嚇して見たが、何の効果もない。