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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

それ等が淀んだ空気の中に、奇怪な陰影を作っていた。

床に横わる太い鉄骨の上に、こればかりは非常に贅沢な羽根蒲団を敷いて、そこに二人の黄金仮面が腰かけていた。

ひそひそと囁き交わす言葉の調子が、決して男同志の話振りではなかった。それに小柄な方の声が透き通る様に細いのは、女性である事を語っている。ルパン一味の女性と云えば不二子さんの外にはない。そうして不二子さんとこの様な睦言を囁き交わす男性は、ルパンの外にある筈がない。

そこへ、地下道から、次々と、さい前の四人の黄金仮面が帰って来た。高手小手に縛り上げられ、猿轡まではめられた運転手姿の明智小五郎を従えて。

四人のものは口々に、首領の前に事の仔細を報告した。

波越警部は逃げおおせたのだ。

いかに足長の西洋人でも、余りにハンディキャップが多過ぎたものと見える。それに長追いをして、O町の人家に近づいては却って危険なので、残念ながら引返す外はなかった。追手の三人はまだゼイゼイと息をはずませていた。

折角明智小五郎を虜にしたのも、何の甲斐もなかった。逃げ帰った波越警部は大仏襲撃の警官隊を組織して、時を移さず引返して来るに極っている。