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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
何とか云わないかね。君の智恵はもうそれ切りなのかい」
暫く沈黙が続いた。明智は最後の非常手段をとるべく、ひそかに準備をしていたのだ。
「ではルパン君、君の逮捕はあきらめよう。その代り、君の計画は最後の一つまで、すっかり放棄しなければならぬ。君は我々の国から、一物をも奪い去ることは出来ないのだ」
「エ、何だって?」
「僕はね、君の唯一の収獲であった不二子さんを、君の魔の手から取戻そうというのさ」
その言葉が終るか終らぬに、飛行機がグラグラと揺れて、甲高い悲鳴が下界へと下って行った。二つの黒い塊りが、大空にもんどり打って、砲弾の様に落下した。嫌がる不二子さんを小脇に抱えた明智小五郎が、身を躍らせて飛行機を飛び降りたのだ。
だが、決して自殺を計った訳ではない。明智の背中にも、不二子さんの背中にも、パラシウトの綱がしっかりと結びついていた。
噂の伝播は飛行機の速度よりも早く、下界の人々は、今頭上を飛んでいるのが怪賊黄金仮面の飛行機であることを知っていた。その怪飛行機から、二つのパラシウトが湧き出したのを見ると、騒ぎは一入烈しくなった。
家々の屋根には、町中の人が鈴なりになって、大きな口を揃えて空を見上げていた。