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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

警官達の間に低い笑声が起った。だが、その笑声は何か気まず相に、じきやんでしまった。何十人という警官隊が、このたった一挺のおもちゃのピストルの為に、思うが儘に飜弄されたかと思うと、馬鹿馬鹿しさ、口惜しさに、笑いどころではなかったのだ。

仕事師がなかなかやって来ぬので、又一人の警官が事務所へ走った。そして、愈々足場が出来上ったのは、それから一時間もたった時分であった。

賊の死骸を取りおろす役目は、管内の消防夫粂さんという、威勢のいい、梯子乗りの名人であった。

流石商売柄、粂さんは、何の危なげもなく、急傾斜の屋上へ昇って行った。屋根の下へ張り出された足場には、二人の仕事師が死骸を受取る為に待ち構えている。

地上の群集は、待遠しかった足場がやっと出来上り、土地の人気者粂さんの姿が、探照燈の円光の中に現われると、ドッと歓呼の声を上げた。

闇の中空に浮いた、巨大な白いとんがり帽子を、これは黒蜥蜴の様に見える粂さんが、頂上にぶら下った金守宮に向って這上って行くのが、活動写真の様に眺められた。

粂さんは遂に頂上に達した。黄金仮面の死体に手が掛る。と見ると、これはどうしたのだ。