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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

警部が意味ありげに尋ねる。

「イヤ、昨日見たのが初めてです。三好も見知らぬ男の様です。ただ教会の確かな紹介状を持っていたので、泊めたと申すことです」

「では、あの男をここへ引出して、一応質問を致して差支ございませんか」

「いいですとも、わしもあの男は何だか妙な奴だと思っていた位です」

そこで、やっと麻酔から覚めた長髪長髯の怪人物が、この臨時法廷へ連れ出された。

「君は昨夜十二時頃、どこにいたのですか」

警部が、臨時被告の住所姓名其他を聞訊した後、先ずおだやかな第一矢を放った。

「十二時少し前、三好さんと御茶を呑んでいました。それからあとは、御承知の通り、何も知りません。犯人は何ぜ私の様な者を睡らせる必要があったのかと、怪しむばかりです」

「君は、お茶を呑んだのが十二時前だというのですね。併し、三好さんも三好さんの奥さんも、確かな時間は記憶がない。三好さんがお邸から帰って来たのが、多分十二時頃だったと云っています。とすると、あなた方がお茶を呑んだのは、十二時を余程過ぎていたと考えなければなりませんね」

「私も確な記憶はありませんが、若し十二時過ぎであったとすると、どういうことになるのでしょうか」