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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

それから十日ばかりは、何のお話もなく過ぎ去ったが、その間とても、噂は噂を生み、おびえきった人々は、枯尾花を妖怪と見誤ったことも度々であった。

古物商の薄暗い店内に、はげちょろけの仏像に並んで、一体丈けギラギラ光る金色の如来像が立っていたが、あれが黄金仮面ではなかったかと一人が云うと、もうそれに違いない様に、噂はそれからそれへと伝わって行った。

又ある時は、上野の帝室博物館で、場内の掃除女が気絶した騒ぎさえ持ち上った。閉館近い夕暮のこと、仏像ばかり並んでいる陳列室を掃除していると、等身大の鍍金仏が、フラフラと彼女の方へ歩いて来る様な幻覚を感じて、テッキリ黄金仮面と思込み、キャッと悲鳴を上げたまま、気を失ってしまったと云うのだ。

それは兎に角、本物の黄金仮面が、三度目の犯罪を企てていることが分ったのは、四月も終りに近いある日のことであった。

それは、どんより曇った、変に蒸し蒸しする、何となく圧えつけられる様な夕方であったが、明智の部屋借りをしている、お茶の水の開化アパートの一室へ、妙な客が訪ねて来た。

我々の主人公明智小五郎の住居について記すのは、これが初めてだから、少々説明をしなければなるまいが、彼は『蜘蛛男』