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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
過去の、何もかも放漫にまかせていた斎藤家時代の爛熟だけを称えて――それがゆえに、その斎藤家は三族までも滅び、城下の民も共に、外敵の侵攻と兵火のくるしみをあの如くうけて、今もなお、その創痍が癒えきれないであるのだ――とは強いて歪曲していわないのであった。
「殿。……殿」
勝家はそっと、信長のたもとを引いた。
耳へ口をよせて、
「一向僧ですぞ、敵のまわし者にちがいありません」
あたりの群集にさとられぬよう眼をくばりながら囁いた。
「うム。むむ」
信長はうなずく。そのあいだも人輪の肩ごしに、眸は、演舌している法師のすがたへ射向けていた。
さっき市の雑沓のなかで、博労にどなられたのは、信長だった。従者は柴田勝家である。もちろん微行で、その偽装にも細心な気をくばっている。
領民が踊り遊ぶ日は、自分も領民のなかへ出て踊る信長だった。少年期からの素行にみても、こういうことはさして意表に出た行動とは、家臣たちも思わない。
ただ時節がら、危険だけが案じられる。で、勝家として、重大な任を負っているわけだった。信長はまた、少しもそんな点は意に介していないらしい。
ここしばらく軍旅のこともないので、彼はもっぱら内政と外交に心をいれていた。