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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

毘沙門堂主

彼処の敵も捨ておき難いが、長嶋はまだ一地方の敵、この信長を仆さんとする敵の根元ではない。――火事を消すに火元を措いて、他の壁に映っている幻影に水をそそいでいたら人は嗤う。しかも、そこで大切な時と軍馬を費やしてしまうなど、愚のいたりではないか。……まあしばらくやすめ。百日がほど、休養して、どこが根本の火元か、そち達も、ひろく天下をながめて見定めておくがよい」

毘沙門堂主

甘糟三平は、甲斐の名将として聞えのたかい甘糟備中守が一族の子であるが、特殊な才能のあるために、かえって低い役目におかれたまま、十年も働いていた。

「――人間、あまり重宝がられるのもよし悪しだよ。むしろ鈍物に生れて、生涯一度か二度という時に、一生の働きをいちどにして、あとは不器用者といわれていたほうがいい」

近ごろ四十にも近くなると、甘糟三平も、時々そんな愚痴をこぼした。

けれど、彼はまだ依然として、持ちまえの才能をもって、敵国と甲州のあいだを、まるで韋駄天か天馬のように、のべつ往来していた。

三平の所属は、武田家の乱波組(隠密)であった。敵国攪乱、諜報、聯絡、流言浮説の撒布など、あらゆる実戦以外の戦闘に跳躍しているひとりであった。