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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
「こうも弱いか。越前は」
越前の心ある将士は、味方のふがいなさに哭いた。
けれど、そういう猛将や勇士は、かならず取っ返しては討死した。なんのための弱さか、なんのゆえに織田軍に当りきれないか、ふしぎというほかはない脆さであった。
亡ぶものは亡ぶ素因を多分に持って、当然な崩壊の一瞬に来るのであるが、その瞬間には、自他共に、
――あれほどな大厦が。
と意外に思う。
しかしあらゆる興亡の現象には、すべて当然があるのみで、奇蹟や不思議はすこしもない。朝倉勢の弱さなども、主将義景の行動を見るだけでも、その理由がわかる。
潰走する味方にまじって、梁ヶ瀬から逃げて来る途中、すでに義景は、織田軍の猛烈な追撃に度を失って、
「だめだ! 逃げきれん! もう馬もわしも疲れた。美作美作、山へ」
と、反撃を試みようとする策もなければ気力もない。ただ身一つを考えて、急に馬をすてて山中へ隠れようとしたほどだった。
託間美作という重臣は、
「そんなことでどうしますか」
と、哭かんばかり叱咤して、彼の太刀帯をつかんで引き戻し、無理に馬へ騎せて、越前の方へ落した。
そして自分は、義景を逃がすためにふみとどまり、千余の手兵をもって、驀進して来る織田軍を、幾刻かそこで支えていた。