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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
「その敵、一歩も味方の岸を踏ますなッ。一人も、敵の岸へ返すなッ」
と、どっと、流れの中へ突撃して来た。
坂井隊は、敵の横へ。
池田の将士は、敵の突角へ向って、ぶつかって行ったのである。
接戦は、一瞬に起った。
槍と槍、太刀と太刀。――また、組む者、馬上から落ちる者、姉川の水は、血か、映じる朝陽か、鮮紅燦々と揺れに揺れた。
磯野丹波守を先頭に、率先して突きこんで来た浅井勢は、浅井方のうちでも選り抜きの精兵だったにちがいない。
織田方の二番備え、坂井右近の隊は、完膚なきまで、叩きつけられた。
隊長右近の子、坂井久蔵は、
「むッ、無念だッ」
と、その戦の中で、敵味方中へ聞え渡るほどな絶叫をあげて討死を遂げた。
精兵、百余人が、つづいて河中に戦死した。
当るべからざる勢いで磯野丹波の兵は、三番備えの池田勝三郎の隊を突破して行った。
勝三郎の麾下が、
「くッ、くそ」
「やるなッ」
と、槍をそろえて、その突角へ遮りに向ったが、まるで寄せつけなかった。
四番備え。
木下藤吉郎の陣だった。
藤吉郎も、
「こんな凄まじい敵を見たことがあるか」
と、半兵衛を顧みてつぶやいたほどだった。