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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

――おいッ、くせになるから、ふくろ叩きにして、湖水へたたッこんでくれ」

「ア。ごめんなさいッ」

男は逃げまわった。

逃げたが却って悪い。彼らの野性をよけいに駆りたてた。多勢の荒くれどもは、その襟がみをつかみ、蹴る、撲る――の存分を振舞いながら、渚のほうへ引きずって行った。

「茂助、茂助ッ」

藤吉郎は、あわただしく、指を彼方にさして命じた。

「助けてやれ。そして、打擲されているあの男、試みに、これへ連れて来い」

堀尾茂助は駈けて行った。

――此方で見ていると。

茂助は、大喝して、人夫たちを叱りとばしている。そして今にも湖水へ投げこまれるところだった男を、いきなり自分の肩へ奪ってひっ担ぐと、無造作に駈けもどって来た。

「連れて参りました」

肩から投げ出すように、その弱々しい人夫を、藤吉郎のまえにひきすえると、男は、

「おゆるし下さいまし。どうかおゆるしを」

と、まだ悲鳴に似た声ばかりつづけて、顔を地から離さなかった。

藤吉郎は、そのすがたを、いつまでも凝視していたが、やがて、

「面をあげい」

と、穏やかにいった。

癲動していた男も、ようやく落着いてきたらしいが、どうしても顔をあげようとはしなかった。