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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
人間はそういう善性を生れつき持っている。まして主君からそれを命じられたのである。役不足など考えているいとまはない。
「おういッ、於福うッ」
「おーい。おたんこ茄子」
市松と虎之助は、かわるがわるに呼んでみた。そして真ッ暗な丘のすそを歩きまわった。
「……いないや」
「どこへ行っちまったんだろ」
「変なやつ」
「何だって、御主君は、あんな男を、大事にお連れになって来たのかしら?」
どん栗林の小道にはいった。右を見、左を見、呼んでみたり、藪を叩いてゆく。
すると、星明りを、ガサガサと戦がせて、うごき出したものがある。虎之助が見つけて、
「いたよ、いたよ、ここに」
と、うしろの友へ告げた。
とたんにそこから跳び出した影は、豹の如く、虎之助をつきとばした。そして不用意に駈けて来る市松へ向って、出あいがしらに、わッと、大きく口を開いた。
隠れていた敵兵のひとりだったのである。もとより雑兵にはちがいない。市松も虎之助も、びっくりしたが、それ以上、敵兵のほうが逆上っていた。
「こん畜生」
いちど転んだ虎之助は、雑兵の足に抱きついて、芋の蔓みたいに離れなかった。
「於市どの、つかまえているから、斬れッ、斬れッ」