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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
「おれは、いいのさ」
市松は傲慢にいう。
虎之助に対するとき、いつもこう兄貴顔するのは、彼の持前でもあった。
「ゆるゆる休めと、殿から公然おゆるしをいただいた体だ。おとといから昨日にかけ、たった一日半夜で宮路山の城を陥し、このたび備中入りの魁に第一の功をあらわした俺だ。ただ怠けているのとはちがう」
と、いよいよ大きな鼻をして、
「ところで、貴様はどこへ行くのか。いやに武者振りばかり作っているじゃないか」
やはり気になるものとみえ、じろじろ虎之助の支度を見、また、辺りの部下たちを見まわしていた。
市松が見まわしたのもむりはない。虎之助と共に、頻りと身支度に余念ない侍たちは、みな忍びの者ばかりだった。
甲賀侍の美濃部十郎。伊賀侍の柘植半之丞などの顔も見える。
「え。おい。どこへ行くのか」
市松はとうとう起き上がって、こっちの幕へ来た。
「いえないよ。行き先は」
虎之助は、意地わるく、明かさなかった。
「なぜいえぬ」
市松はくってかかる。後輩に対してこの先輩は常に敬意を強要した。
「軍の機密。あとで分る」
「あとなら聞く必要はない。機密とは、敵の間者に対することだ。